命こそあだなれ

道路に茶色いものが落ちていた。よくよく見ると蝉だった。死んでいるのかと思ったが、蝉の横に足を置いた瞬間、羽をばたつかせて、ジージーと音を出しながら蛇行を始めた。結果的に次の一歩で踏みそうになってしまい、危ういところで避けた。
避けた後、裏返って道路に落ちて最早飛ぶこともままならないなら、踏みつぶしてやった方が良かったかと思ったが、虫程度の構造では痛覚もないし、痛みを苦痛として処理する機能もないだろうから、どちらでもいいかと思い直した。
そんな夏の午後。